お迎え
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大胆なクリッピング、歩くのが大好きなオカメになってしまいました。
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「えへ、サブちゃんで〜す♪」
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「ねー、それ、描いたの?」
仕事をしていると、背後から声がかかる。
「え?」
振り向くとまた、
「ねぇ、それ、そのほっぺた!」
職場のデスク周りには、所狭しと可愛い子供たちの写真が貼ってある。
声の主の視線の先は…おぉ! こやつか。まだ幼い頃のオカメインコ、サブレ。あどけない顔にオレンジのほっぺが実に愛くるしい。
「んな訳ないでしょうが…。もとからだよ、もとから!」
鳥好きにはお馴染みでも、世間一般ではオカメインコを知らない人は多い。
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“じゃんじゃん”
文鳥との三角関係など、話題
には事欠かない子でした。
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サブレは、キンカチョウの後釜としてやって来た。前年の夏、台風が直撃した日、非手乗りながら長らく愛嬌を振りまいてくれたキンカチョウの“じゃんじゃん”が大往生(という事にしておく)をとげた。
次はインコ系でちょっと変わったのが欲しいなーと、思案したが、“一緒に飼っても文鳥が肩身の狭い思いをしない鳥”という絶対に譲れない条件があったので、小心者として名高いこの鳥をお迎えする事にした。
弟に「オカメインコ飼うんだ〜」と話したら、一言。
「馬鹿っぽい」
そうか? そうかな…。
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いよいよお迎え
サブレは2005年3月19日、チェリーと一緒にお迎えした。
オカメインコには様々な色変わりがあってマニアも多いようだが、オカメインコの魅力といえば、やっぱりこのほっぺ。“ほっぺがなくっちゃ、オカメじゃな〜い!”という訳で、お迎えの条件は“ほっぺが赤い”事。
ペットショップには、色々なオカメがいた。成鳥になっているものが多かったが、ヒナヒナしているのが2羽。オカメを飼うのは初めてだったから、完全に差し餌が終わっている子をお迎えするつもりだった。
1羽はまだ差し餌中のノーマルパイド。人の顔を見れば「ギャァ、ギャァ」と騒々しい。可愛いけれど、これは完全に対象外。そして、同じカゴに入っているもう1羽に目が釘付けになった。
ほっそりとして、上品な色合いのそのシナモン・オカメは、くちばしの両側にパウダーフードの塊をくっつけてはいたが、もう自分で餌をついばんでいた。店員さんに確認すると、完全にひとり餌になっているという。お迎えするのには申し分ない段階だ。何より、動きが優雅で美しい。
カゴから出してもらうと、オカメは差し出した指に恐る恐る乗り移り、しっかと指を握り締めた。すごい握力だ。もう、これでメロメロになってしまい、お迎え決定。
性別はまだ分からないという事であったが、今のままで十分美しいのでメスでもかまわないと思った(本音を言えば産卵の心配がなく、おしゃべりをしてくれるオスの方がいいに決まっている)。お値段は、チェリーのちょうど10倍。この差は何なんだとちょっと憤慨(文鳥の安さに)しつつ、よい子をお迎えできたのが嬉しかった。
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オスだったらおしゃべりするかもしれないから、言いやすい名前がいいと思い、サブレと名付けた。ヤッピー、チェリーに続く3番目の子だからサブちゃん。三郎じゃ何だし、女の子でもいいようにサブレ。友人に「鼻の穴が大きくなっちゃうよ」と言われたけど、「ま、演歌でも教えてみるよ」と受け流す。
サブレは新しい環境になじむのに時間がかかった。まず、お迎え早々に困ったのが餌を食べない事。お店にいたときと同じ餌なのに全く手を付けない。ケージ(46cm四方)も大きすぎたようで、殆ど床上生活だ。お店にいたときは普通に止まり木にとまって、餌食べていたのに…。床に餌をまいてみたら、ほんのちょっとだけ食べた。
お迎え翌日の体重は77gであったが、3日後には73gに落ちていた。
お店に電話して相談すると、すでに2週間前にひとり餌になっていたけれど、同居の子が差し餌してもらっているときに一緒につまんでいたという。差し餌は、粟玉にケィティのパウダーフードを混ぜた物だったというが、近場でそんなしゃれた物は調達できない。とりあえず、近所の小鳥屋さんで粟玉とカスタムラックス(中型インコ用)を買ってきた。カスタムラックスは、ヒマワリ、サフラワー、麻の実…と、獣医さんが見たら目をむきそうな内容だが、とりあえず何か食べてもらわなくてはどうしようもないので、少しでも食いつきが良くなれば…と思った。
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とりあえず、ばらまき作戦
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サブレは、ふやかした粟玉を見るや「ピュィ〜ッ!!」と喜びの雄たけびを上げ、食らい付いてきたが、ひとしきり食べると何かが違うと気付いたのか、それっきり食べなくなった。カスタムラックスの方は、まあまあ気に入ったようだった。変わったものがたくさん入っているのが良かったらしい。
お店で与えられていたのは、普通の皮付き餌とケィティの着色ペレット(お花の形をして可愛らしい)。しかし、ペレットは殆どと言っていいほど食べない。お店でもペレットを食べているのを見なかったから、結構、パフォーマンスで入れてあっただけかも…と、ちょっと勘ぐってしまう。 |
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健康診断
お迎えから2週間後、チェリーのトリコモナス騒動をきっかけに鳥専門の動物病院で健康診断をしていただいた。飼育書に書かれている標準体重(ひとり餌完了時点で90g)と比べあまりにも小さいので心配したが、「体格からして痩せ過ぎではないので大丈夫ですよ」との事であった。「まずは80gを目標に、少しずつ体重を増やしましょう」と言われた。
サブレは先生につかまれて、この世の終わりかと言わんばかりに絶叫した。サブレもまた、手を怖がる子だったのだ。「まだ、なんにもしてないでしょう」と優しく言っていただいたが、つかまれている間中、叫び通しで飼い主としては肩身が狭い。
先生はサブレの羽毛を見て、「これ、ストレス線ですね」とおっしゃった。それまで全く気付いていなかったが、言われてみればどの羽にも中ほどに線が入っている。つくづく、自分の“鳥を見る目のなさ”を思い知らされた。
「いつかは分かりませんが、この子には、かなり以前に栄養的な危機があったのでしょう」という事だ。
体格が小さいのもそのせいかしらん、と思いつつ、とりあえずは“サブレがやせっぽっちなのは自分のせいじゃない”と開き直る事にした。
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その後もサブレの体重は一向に増えなかった。サブレは、気に入らない事があればすぐ駄々コネをするちょっと扱いにくい子だった。“ヤッピーが一番”のルールをなかなか受け入れられないようであった。一時期、育児ノイローゼ気味になって、“ヒトの子じゃなくてよかった。私にゃ育児の才能がない”としみじみ思ったものだ。
もう一点、困ったのが翼のクリッピング。かなり大胆に切られていて、殆ど飛べない状態だった。移動するときはいつも、すたこらさっさと歩いている。
ホームセンター(天井が相当高い)の中にあるペットショップだったから、万一の事を考えれば、やむを得ない処置であろうと思うが、このまま飛べない鳥になるんじゃないかとちょっと不安だった。
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翼を広げるとなかなかの迫力 |
しかし心配には及ばず、風切り羽が2,3本生え変わった7月28日、サブレは初飛行に成功した。飛んだはいいが着地の仕方が分からず、長い間カーテンにしがみついて困っていた。
オカメインコは、野生下では“オーストラリア最速の鳥”と言われているらしいが、サブレは部屋の中でも、ものすごい勢いで飛んだ。バタバタと大きな音を立てて飛び回るので、初めのうち、文鳥たちは大パニックに陥っていた。
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そして、風切り羽が生え変わると同時に、サブレはオスであると確定した(新しい風切り羽や尾羽に模様がない)。ゴールデンウィークの頃からピチクリパチクリよくさえずっていたし、5月下旬より変てこりんな歌を歌ったり言葉をしゃべり始めたりしていたので“オスかなー”と期待していた。ちょっと得した気分だ。
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